「『北京市家屋?建物使用安全管理條例（草案）』（意見募集稿）」
近年、中國各地は家屋倒壊による人身事故が頻繁に発生している。背景には、一部の家屋?建物（以下「家屋等」という）の所有者と使用者は、修繕義務を怠り、家屋等にある既存の損傷を放置している実態があり、「短命家屋」という社會的な問題を引き起こしている。北京市では、2011年から施行されている「北京市家屋?建物使用安全管理弁法」（市政府令第229號、以下「弁法」という）があるとはいえ、家屋等の老朽化が進んでいることに伴い、弁法は現実から離れ、いくつかの既存問題に不適用になってきた。例えば、安全評価義務の履行期間に関する定めが明確ではない上に、どのような場合に安全評価義務を履行しなければならないことも規定されていない。結果として、義務を履行しない傾向になりつつある。前記問題を解決するために、北京市人民代表大會常務委員會法制工作委員會は2025年9月26日に「北京市家屋?建物使用安全管理條例（草案）」（意見募集稿）（以下「條例」という）を公布し、パブリック意見を募集し始めた。條例は49條からなり、主な改正內容は以下の通りである。
一、箇條書きで家屋等使用安全責任者の義務の明確
家屋等使用安全責任者（以下「責任者」という）は所有者、違法建物の當事者や使用者（所有者が行方不明又は権利所屬について紛爭がある場合）である（12條）。使用者を責任者とする定めが弁法にはなかったが、改正により使用者も責任者とされうることに留意されたい。これらのものは、以下の義務を履行しなければならない（13條）。
■計畫上の用途、設計上の要求事項及び家屋等の性質に従い、合理的に家屋等を使用すること、
■家屋等及びその附屬する構築物に対し、安全點検、維持管理及び修繕を行うこと、
■規定に基づき、家屋等の安全評価又は安全鑑定を専門業者に委託すること、
■危険な家屋等に対しては、補修?補強、使用停止又は取壊し等の危険除去措置を講ずること、
■家屋等の使用人に対し、家屋等を安全かつ合法的に使用するよう告知し、督勵すること、
■関係部門が組織、又は実施する家屋等の使用安全監督管理業務に協力すること、
■法律、法規に定めるその他の義務。
二、外壁等安全義務の追加
責任者は、カーテンウォール、外壁化粧タイル及び外壁外斷熱材について、日常の點検、安全評価、安全鑑定並びに補修及び維持管理を強化しなければならない。安全上の問題を発見したら、速やかに防護及び改善の措置を講じるものとする（19條）。
三、安全検査協力義務
弁法には當局の安全検査について定めなかったが、條例はこの狀況を一変し、當局の安全検査義務を規定している（21條）。責任者は、行政部門が法に基づき建物の使用安全監督管理の職責を履行することに積極的に協力し、関係狀況を誠実に報告し、必要な資料を提供しなければならず、いかなる方式又は手段によっても妨害及び阻止をしてはならない（22條1項）。
四、安全評価義務の履行期間の明確
弁法は安全評価義務の履行期限を規定していなかったが、條例はこの期限を明確にした。公共建築物の使用年數が25年に達した場合、責任者は、建物の安全鑑定機関に委託して安全評価を行わなければならない。その後5年ごとに評価を行うものとする。設計上の耐用年數に達した後も、安全鑑定により引き続き使用可能とされた場合は、2年ごとに評価を行わなければならない（23條1項）。
四、安全鑑定義務の最適化
安全鑑定の実施要件について、條例は弁法の規定を最適化し、以下の場合には安全鑑定を実施しなければならない。
■建物が設計上の耐用年數に達し、引き続き使用する必要がある場合、
■安全評価の結果、建物の構造が安全使用の要求事項を満たしておらず、再び安全鑑定を行う必要がある場合、
■建物にひび割れ、変形等の構造的な損傷、又は地盤沈下がある程度発生した場合、
■建築主體及び耐力構造を勝手に変更した後、是正措置を講じた場合、
■その他、法律、法規、規則に規定されている安全鑑定を行う場合。
