「企業による競業避止コンプライアンスガイダンス」
2025年9月1日、最高人民法院による「労働紛爭事件の審理に関する法的問題の解釈(二)」(以下「労働解釈二」という)が施行され、競業避止義務に関する條項はいくつか新たに定められた。これを契機に、企業の営業秘密の保護と労働者の就業権とのバランスを取るために、人力資源社會保障部は、2025年9月4日に「企業による競業避止コンプライアンスガイダンス」(人社庁発〔2025〕40號。同日施行)を公布した。このガイダンスは字面通りのガイダンスだけであり、企業にとって法的拘束力がないことをご留意ください。それにしても、ガイダンスに従って、労働者と競業避止契約を締結することは、労働者の就業権への侵害を避け、損害賠償を負うリスクを最大限に抑制する手段の一つである。ガイダンスは25條からなり、主な注意點は以下の通りである。
一、競業避止義務を負う労働者の範囲の明確
労働法(2012改正)24條1項によれば、企業は、営業秘密を知っている高級管理職、高級技術者やその他の守秘義務を負う労働者と競業避止契約を締結することができる。実務上、企業は営業秘密を知らない労働者とも競業避止契約を締結するケースが多く見られる。この問題を解決するため、前記労働解釈二には、営業秘密を知らない労働者による競業避止契約の無効に関する訴訟は、法院に支持されることが明確に定められた(同解釈13條1項)。ガイダンスには、このような労働者の範囲をある程度(法的効力がないため)明確に規定され、業界通用の専門知識と技能だけを知っている又は業務上に企業の一般経営情報だけを知った労働者は、守秘義務を負わないものとされている(ガイダンス7條3項)。
二、競業避止義務の範囲の制限
労働解釈二には、競合避止義務の範囲が制限されている。競業避止義務の就業範囲、地域及び期限等は、営業秘密との間に相當性があることが要求されている。合理性のない就業範囲、地域及び期限等については、競業避止契約の當該部分が無効である(同解釈13條2項)。ガイダンスは、競業避止義務の就業範囲と地域をさらに明確にした。競業避止の対象となる就業範囲は、當該企業と競爭関係があり、企業の生産又は経営する同種の製品、又は同種の事業に従事する他の企業に限定されるべきである。競業避止義務には、対象となる企業のリストを列挙することができる。競業避止の地域は、企業の事業目的と一致しているべきであり、十分な理由がない限り、原則として全國さらに全世界を対象として定めてはならない(ガイダンス10條)。
三、経済補償の期間による増加
競業避止義務の最大期間は2年までであるものの(労働法24條2項)、営業秘密との間に相當性が要求されている(労働解釈二13條2項)。これらの規定から見れば、競業避止義務について、期間という要素も考慮されている。ガイダンスは、この趣旨を參考しながら、期間が1年以上の契約においては、経済補償が労働契約が解除される又は終了する前の12ヶ月の平均賃金の50%を下回らないことを薦めるとしている(ガイダンス13條2項)。
現在のところ、営業秘密との間に期間の相當性を有しないもののみを無効とされているが、今後の法規制は、労働解釈二の立法趣旨とガイダンスを參照し、ガイダンス13條2項に類似する規定を定める可能性が高く、注意する必要がある。
四、企業の競業避止契約の解除権
労働者と競業避止契約を締結した後、企業は一定の補償(最低3ヶ月の競業避止義務契約に定めた経済補償)を支払うと引き換えに、競業避止契約を解除することができる。(ガイダンス18條)。






