中國(guó)「法定退職年齢の段階的な引上げに関する弁法」
2024年9月13日、第14期全國(guó)人民代表大會(huì)常務(wù)委員會(huì)第11回會(huì)議において、「國(guó)務(wù)院による法定退職年齢の段階的な引上げに関する弁法」※1「(以下「弁法」という)が可決された(施行日は2025年1月1日)。
弁法により、男性?女性の法定退職年齢が引き上げられるとともに、施行日以降、「國(guó)務(wù)院による高齢者?障害者の幹部の配置に関する暫定方法」および「國(guó)務(wù)院による労働者の定年退職、退職金に関する暫定弁法」(國(guó)発[1978]104號(hào)、以下、併せて「暫定弁法」という)における定年退職年齢に関する規(guī)定は適用されなくなる。
弁法は計(jì)9條からなり、主として法定退職年齢の段階的引上げ、年金保険の納付期間の延長(zhǎng)および定年退職年齢の柔軟な調(diào)整?実施などが規(guī)定されている。
本稿では、弁法の重要と思われるポイントを簡(jiǎn)単に紹介する。なお、特に表記しない場(chǎng)合、引用條文は弁法の當(dāng)該條文を指すものとする。
■法定退職年齢の段階的引上げ
暫定弁法は中國(guó)の法定退職年齢に関する現(xiàn)行規(guī)定であり、1978年より施行されている。暫定弁法および「國(guó)家規(guī)定に反する企業(yè)従業(yè)員の事前定年退職の制止および是正についての問(wèn)題に関する通知」(労社部発[1999]8號(hào))第1條1項(xiàng)によると、勤続年數(shù)10年以上、かつ、以下の條件を満たした場(chǎng)合、定年退職となる。
1.男性:原則として満60歳
2.女性:幹部以外の場(chǎng)合は満50歳、幹部※2の場(chǎng)合は満55歳。
3.坑內(nèi)労働、高所労働、高溫労働、過(guò)酷な肉體労働など特殊な業(yè)務(wù):男性満55歳、女性満45歳
4.醫(yī)院が労働能力を完全に喪失したと診斷し、労慟鑑定委員會(huì)の確認(rèn)を得た場(chǎng)合:男性満50歳、女性満45歳
5.業(yè)務(wù)により障害を負(fù)い、醫(yī)院が労働能力を完全に喪失したと診斷し、労働鑑定委員會(huì)の確認(rèn)を得た場(chǎng)合
弁法は、2025年1月1日より15年間かけ、法定退職年齢を段階的に引き上げるものとしている。具體的には、男性および上記2のうち女性幹部については、法定退職年齢を4ヵ月ごとに1ヵ月ずつ引き上げ、2039年までにそれぞれ満63歳(男性)と満58歳(女性管理職)とし、法定退職年齢が満50歳の女性については、2ヵ月ごとに1ヵ月ずつ引き上げ、2039年までに満55歳とされる※3(第1條)。
なお、上記3の特殊な業(yè)務(wù)に従事する場(chǎng)合の定年退職年齢については、弁法に規(guī)定されていないものの、今後、関連規(guī)範(fàn)を整備するものとされている(第8條)。
■年金保険の納付期間の段階的引上げ
社會(huì)保険法(2018年改正)第16條によれば,基本養(yǎng)老保険(基礎(chǔ)年金)に加入する個(gè)人は、法定退職年齢に達(dá)した時(shí)に累計(jì)保険料納付が15年以上の場(chǎng)合には、月々基礎(chǔ)年金を受け取る旨が規(guī)定されている。
これに対し、弁法は、2030年1月1日から2039年まで、基礎(chǔ)年金を受給するための最低納付期間を、現(xiàn)行の15年間から20年間に、毎年6ヵ月ずつ段階的に引き上げるものとしている。また、法定退職年齢に達(dá)した従業(yè)員が最低納付年限に満たない場(chǎng)合、納付期間の延長(zhǎng)または一括納付により當(dāng)該年限に達(dá)し、基礎(chǔ)年金を受け取ることができる旨が規(guī)定されている(第2條)。
■柔軟な定年退職制度
基礎(chǔ)年金の最低納付期間に達(dá)した従業(yè)員は、自らの意思で早期退職を選択することができる(第3條)。ただじ、退職の前倒しは最長(zhǎng)3年に限り、かつ、早期退職時(shí)の年齢は原法定退職年齢(女性は非管理職50歳と幹部55歳、男性は60歳)を下回ってはならないものとされている。
一方、定年退職年齢の延長(zhǎng)は、勤務(wù)先と従業(yè)員との合意が必要になる(第3條)。労使雙方の合意があれば、最長(zhǎng)3年間、退職年齢を延長(zhǎng)することができる(同條)。つまり、労使雙方の合意により、男性は66歳まで、女性は61歳まで定年退職年齢を延長(zhǎng)することができる。
■定年退職後の再雇用
定年退職年齢に達(dá)した場(chǎng)合の再雇用について、実務(wù)上は、労働者との間で「労働契約」ではなく、「労務(wù)契約」などを締結(jié)するケースが多い(この場(chǎng)合、使用者は、年次有給休暇や経済補(bǔ)償金の支払いなど、労働法に基づき課せられる義務(wù)を負(fù)わない)。
この點(diǎn)について、弁法は、法定退職年齢を超える労働者を雇用する場(chǎng)合、使用者は、労働報(bào)酬、休息休暇、労働安全衛(wèi)生、労災(zāi)保障等の基本的権利を保障する必要がある旨を規(guī)定している(第6條)。もっとも、定年退職後の再雇用が、労働法上どのように位置づけられるかは明確になっておらず、殘された課題となっている。
■おわりに
弁法は、本稿に記載した法定退職年齢および年金保険の納付期間の引上げのほか、年金保険のインセンティブメカニズムの整備、定年退職まで1年未満の場(chǎng)合の失業(yè)保険の給付制度、シルバーサービスシステムの構(gòu)築および包容的児童サービスシステムの発展などの課題について、原則的な方針も設(shè)けている。弁法の実施により、中國(guó)の労働市場(chǎng)における問(wèn)題(少子化に伴う労働力不足など)の解消が期待されている。
一方、法定退職年齢や年金納付期間の段階的引上げに伴う実務(wù)上の煩雑さ(例えば、従業(yè)員の性別、生年月日とポジションなどにより、法定退職年齢や引上げ年數(shù)が異なる場(chǎng)合がある)のほか、柔軟な定年退職制度に伴う従業(yè)員ごとの退職処理手続への対応、定年退職後の再雇用について、労働関係が認(rèn)定されたり、労災(zāi)責(zé)任が生じたりするリスクも懸念される。弁法の施行は、企業(yè)の労務(wù)管理に大きな影響を與えることから、関連規(guī)定の制定や実務(wù)上の運(yùn)用について、動(dòng)向を注視する必要がある。
※1 http://www.npc.gov.cn/npc/c2/kgfb/202409/t20240913_439534.html。
※2 「幹部」の判斷基準(zhǔn)について、統(tǒng)一的な規(guī)定や基準(zhǔn)は存在しない。公務(wù)員の場(chǎng)合、公務(wù)員法に従い判斷される。國(guó)有企業(yè)の場(chǎng)合、國(guó)家経済貿(mào)易委員會(huì)?人事部?労働社會(huì)保障部が2001年に連名公布した「國(guó)有企業(yè)の內(nèi)部人事?労働?分配制度改革の深化に関する意見(jiàn)」(國(guó)経貿(mào)企改[2001] 230號(hào))第2條は、概ね次のように定めている。[企業(yè)における行政職階を廃止する。企業(yè)は、國(guó)家機(jī)関における行政職階を準(zhǔn)用せず、國(guó)家機(jī)関における幹部の行政職階による待遇も享受しない。従來(lái)の「幹部」と「労働者」の區(qū)別をなくし、身分管理から役職管理に移行する。管理職で働く者を管理人員とする。役職が変更された場(chǎng)合、収入およびその他の待遇は新しい役職に応じて調(diào)整する。なお、裁判実務(wù)上、民間企業(yè)の女性退職年齢に関する紛爭(zhēng)事件などのケースでは、「幹部」に該當(dāng)するか否かについて、労働契約に明記された従業(yè)員の「役職(中國(guó)語(yǔ):崗位)」で判斷され,例えば、「管理職」や「技術(shù)系職務(wù)」の場(chǎng)合、「幹部」として認(rèn)定されるケースが多い(例えば、上海市第一中級(jí)人民法院[2020]滬01民終9063號(hào)事案など)。
※3 弁法別紙「定年退職年齢比較表」によると、弁法の施行に伴い、2025年1月1日から2039年12月末日までの過(guò)渡期間において、1965年1月から1976年8月まで生まれの男性、1970年1月から1981年8月まで生まれの女性幹部、1975年1月から1984年10月まで生まれの非管理職女性について、現(xiàn)行の定年退職年齢が段階的に引き上げられることになる。例えば、1975年1月生まれの男性の場(chǎng)合、弁法の施行により、法定退職年齢は62歳7か月(2037年8月)となる。






