改正『反スパイ法』を読み解く
新中國の成立以降、反スパイ活動は一貫して政府が注目する重大な問題であるが、中國の発展と情報技術(shù)の進歩や普及に伴い、1993年に公布された『國家安全法』は新時代における反スパイの要請に適応しなくなっていた。2014年4月15日、國家主席により総體的な國家の安全観が新たに打ち出されたことを背景として、國際的に通用する方法を遵守し、立法による、反スパイ工作に対する規(guī)範化を開始した。そして同年11月1日、『反スパイ法』(以下、「舊法」)が第十二期全國人民代表大會常務(wù)委員會第十一回會議にて可決された。
先ごろ、新たな挑戦へ向き合い、國家の安全を保障するため、新たに改正された『反スパイ法』(以下、「新法」)が2023年4月26日に可決され、同年7月1日から施行されることとなった。本稿は新法の改正內(nèi)容を簡潔に解説する。
■ スパイ行為の定義が拡大
舊法では國家秘密※1もしくは情報に関するスパイ行為のみ規(guī)定されていたが、新法では「その他、國家の安全および利益に係わる文書、データ、資料および物品」もそのうちに包括され、合わせて「國家機関、機密に係わる?yún)g位もしくは重要情報インフラ※2などへのネットワーク攻撃、侵入、制御、破壊などの活動」への規(guī)制が追加されている(新法第4條)。
ところが、新法は「その他、國家の安全および利益に係わる文書、データ、資料および物品」に対して定義しておらず、立法や法執(zhí)行に解釈の余地を殘している。特定の重要データ、特に公共通信や金融、エネルギー、交通、科學(xué)技術(shù)などの重要な業(yè)界、分野の重要的文書、データ、資料は、今後の法執(zhí)行において新法の対象範囲に入る確率が高い※3。
この他、電子データの越境問題にも配慮しなければならない?!亥签`タ越境移転安全評価申告ガイドライン(第一版)』※4によると、データ越境の技術(shù)的ルートを明確に限定してはいないが、データが國外組織もしくは個人によりアクセス、入手することができるだけでも、國外での違法利用の安全リスクが存在し、データの越境移転に屬することになる。ひとたび當該電子データが上述した重要産業(yè)、分野の重要文書、資料に係われば、國家の安全、公共の利益を脅かす可能性があり、その場合にはスパイ行為に係わるリスクを備えることになる。
■ 國家安全機関の権限委譲を強化
新法は、國家安全機関によるスパイ行為調(diào)査の権限を授與している。區(qū)を設(shè)ける市級以上の國家安全機関の責任者による批準を経て、國家安全機関は法に基づきスパイ行為の嫌疑のある人身、物品、場所に対して検査を行い、その関連する財産情報を照會することができる。スパイ行為に用いた嫌疑のある場所、施設(shè)もしくは財産に対しては、區(qū)を設(shè)ける市級以上の國家安全機関の責任者による批準を経て、國家安全機関は法に基づき差し押さえ、押収、凍結(jié)を行うことができる(新法第28、29、30、33條)。
また、新法は國家安全機関に、スパイ調(diào)査、処分中に個人の出入國を制限する権限も授與している。スパイ行為嫌疑の人員に対して省級以上の國家安全機関は、移民管理機関に通知をして、その出國を禁止することができる。入國後に中國の國家安全を脅かす活動を行う可能性のある國外人員に対して、國務(wù)院國家安全主管部門は、移民管理機関を通じてその入國を禁止することができる(新法第34、35條)。
■ 法律責任の改善
新法は行政処罰の範囲および行政処罰の種類の適用を拡大した。新法は、単位(組織など)もしくは個人によるスパイ行為の実施もしくは他人のスパイ行為実施を手助けすることに対して行政法律責任を追加。それには行政拘束、罰金、生産停止?営業(yè)停止命令、関連証書の取り消し、登記取消などが含まれる(新法第54條)。
同時に新法は、違法取得、データ保持に関連する行政処罰も相応に追加、國家安全機関は警告もしくは10日以下の行政勾留を科し、併せて三萬元以下の罰金を科すことができる(新法第60條)。新法に違反した國外人員には、舊規(guī)定の期限までの出國もしくは國外追放の処罰の上、さらに入國禁止の制限が追加された。期限までに出國する者に対しては、國務(wù)院國家安全主管部門は、その入國禁止の期限を決定することができる。海外追放された者に対しては、海外追放された日から10年以內(nèi)は入國してはならない(新法第66條)。
■ 新『反スパイ法』のもとでの企業(yè)コンプライアンス
現(xiàn)在、中國は反スパイ活動を非常に重視しており、案件に係わる人員、會社に対して強硬な措置を採っている。例えば、2023年5月15日には香港の永住権を持つ梁成運がスパイ罪により無期懲役に処され、併せて個人の財産50萬人民元を沒収された。この判決が下される少し前には、アステラス製薬の幹部が、スパイ活動に従事した疑いにより北京で逮捕?拘束されている。同時期にコンサルティング會社の凱盛融英(キャップビジョン)は、ハイテク、エネルギー資源、醫(yī)薬衛(wèi)生などの重點分野、重要業(yè)界の情報を収集し國外へ提供したとして、是正を強いられ、社內(nèi)の関連人員も調(diào)査と処罰を受けた。
これらの事件は國內(nèi)外で広く耳目を集め、企業(yè)のコンプライアンスに新たな挑戦を課している。新法の要求に適切に対応できるよう、企業(yè)、特にエネルギー、電力、醫(yī)薬品などの重要業(yè)界?分野の企業(yè)は以下に列記した事項を?qū)g施すべきである。
1. 內(nèi)部評価システムを構(gòu)築し、社內(nèi)業(yè)務(wù)に係わる資料、文書およびデータの評価を行い、それが秘密に係わるか否か、もしくは中國の國家安全および利益に関連するか否かを確認しなければならない。
2. 秘密に係わるもしくは中國の國家安全および利益に関連する資料、文書およびデータに対しては、データ越境移転安全評価を適切に遂行し、中國の関連法律、法規(guī)(『中華人民共和國データセキュリティ法』『データ越境移転安全評価申告ガイドライン(第 1 版)』など)に基づき申告しなければならない。
3. 科學(xué)技術(shù)を用いて內(nèi)部データ暗號化システムを構(gòu)築、もしくは會社定款により秘密に係わる資料の安全管理システムを構(gòu)築し、會社の內(nèi)部データの漏洩を防止する。例えば、秘密に係わる文書を暗號化し、関連文書を使用もしくはダウンロードする際には登録を要求、または自動でのウォーターマーク追加を行い、遡及を保証し、対応する文書などの使用完了後には削除もしくは廃棄を要求する。同時に內(nèi)部の従業(yè)員には合理的な基準を設(shè)けたり教育を行ったり、スパイに係わるリスクを回避すべきである。
4. 業(yè)務(wù)で取引する相手方に対しては必要な背景調(diào)査を行い、対応するデータ秘密保持プログラムもしくはシステムの構(gòu)築または保有を要求し、情報漏洩の可能性を防止しなければならない。
※1 國家秘密とは、國家の安全と利益に関係し、法律で定められた手順に基づき確定され、一定の時間で一定の範囲の人員に限って知ることができる事項を言う。
※2 重要情報インフラとは、公共通信および情報サービス、エネルギー、交通、水利、金融、公共サービス、電子政務(wù)、國防科學(xué)技術(shù)工業(yè)などの重要業(yè)界および分野を指し、またその他の、破壊、機能喪失もしくはデータ漏洩が起こった場合、國家の安全、國の経済と人民の生活、公共の利益に重大な損害を與える可能性のある重要なネットワーク施設(shè)、情報システムなどを指す。
※3 例えば、航空會社の內(nèi)部データとは、航運基礎(chǔ)データ、特定船舶の積荷情報、気象データなど。
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1715099641705673237&wfr=spider&for=pc
※4 國家インターネット情報弁公室公布『データ越境移転安全評価申告ガイドライン(第 1 版)』
http://www.cac.gov.cn/2022-08/31/c_1663568169996202.htm






